「マルサの女」にみる税務調査のリアリティ

 

かなり昔の話になりますが,「マルサの女」という映画がありました。
今は亡き伊丹十三監督の作品で,税務当局による税務調査と脱税者との戦いをコミカル且つシニカルに描いて大ヒットを記録した映画です。そのヒットにより,続編の「マルサの女2」や,当時大人気だったファミリーコンピュータ向けのゲームまで作られました。
この映画の一番の功績と言えるのは,一般のサラリーマン家庭には馴染みの薄かった税務調査や税務調査官というものを,世間に一躍知らしめたことではないでしょうか。
今では国税局査察部のことを通称「マルサ」と呼ぶということは,この映画によってもはや常識となりました。小さい子供も遊ぶであろう家庭用コンピューターゲームの名作「桃太郎電鉄」シリーズにも,「マルサカード」というアイテムが登場します。
また,この映画の魅力は,コミカルな雰囲気とは裏腹にある徹底的なリアリズムの追求にあるといえるでしょう。聞くところによると,主人公が使っている電卓も,税務署に備品として配られている物とまったく同じ型だというほどの凝りようだそうです。
これは税務当局のほうが,中途半端な物を作られて納税者に誤解を与えたくない,ということで,制作者側の取材に非常に協力的であったからこそ,ということです。
ですので,映画に出てくる脱税や,税務調査の方法などが非常にリアルに描かれているというわけです。
ちなみに,映画で使われている脱税の手法というのは,悪用される恐れがあることを考えて,あえて非常に古い方法を使っているそうです。ですので,くれぐれもこの映画を見て真似しようなんて思わないで下さい。